【音楽雑談】エマコアの音楽遍歴[その2]

[その1]の続きです。

※注意※

今回の記事には一部グロテスクな表現があります。また、犯罪行為や差別行為等を賛美・奨励・助長する意図は一切ありません。特定の思想や宗教を批判・侮辱する意図も一切ありません。ご了承ください。


ブラックメタル―――

知らない人は全く知らないであろうこのジャンル。実際、専門学生時代に講師に話した事があるのですが、20代のポップス・R&B系の女性講師の方からは「アフリカ系の音楽?」と聞かれました。

ブラックメタルは、北欧…ノルウェー・スウェーデン・フィンランド辺りのスカンディナビア半島発祥の、“悪魔崇拝や黒魔術、アンチ・キリストを想起させるようなHMのサブジャンルの一つ”です。

Wikipediaによると、『デスメタルの否定とスラッシュメタルへの回帰』が発祥のようですが、バンドによってその手法・奏法は様々です。

大まかな特徴としては、
・ブラストビートの多用
・荘厳で宗教的な楽曲
・グロウル(デスボイス)、フライスクリーム(簡単に言えば高音のデスボイスのシャウト)などの歌唱法
・トレモロのリフやシンセサイザーなどの奏法・機材の使用
などがあります。

要するに、ブラックメタルの”ブラック”とは、”ブラック企業”や”ブラックな噂”とかの用法の”ブラック”です。

 

さて。ブラックメタル(特に北欧系バンド)を語る上で避けては通れない存在が、“インナーサークル”という集団です。

彼らは90年代のノルウェーで生まれ、数々の犯罪行為を行い、マスコミからは『ブラックメタル・マフィア』『悪魔崇拝集団』と呼ばれました。(ただ、インナーサークルのメンバーの中には別にそういった思想を持たない者も多く、一概には言えません。

噂によると、『一番邪悪で凶悪な犯罪を犯した者が、一番発言権がある』というルールというか空気があり、ヨーロッパ中で事件を起こしました。

インナーサークルは、後に“メイヘム”というバンドの中心人物となるユーロニモスという男が経営するレコードショップを中心に始まりました。

レコードショップに集まるメタルファン達は10~20代が多く、彼らの集まりがインナーサークルへと発展していきます。

 

さて。この“メイヘム”というバンド。北欧ブラックメタルの中心的なバンドなのですが、ヴォーカルはデッド(死体)という名で活動する青年でした。

彼はステージでは常にコープスメイク(死体のように白塗りメイク)を行い、「自分は既に死んでいる」という幻想に囚われていたようです。(彼は幼少期にいじめによる暴行で死の寸前までいっており、その事が影響していたらしいです。)

デッドは段々とステージ上でも自傷行為を行うようになり、死への渇望に支配されていきました。周囲の人間は心配していたのですが、ユーロニモス『メイヘムのイメージにあう』として、自傷行為を止めないどころか、自殺教唆までしていたようです。(ユーロニモスが純粋な悪意からやっていたのか、ただ弄んでいただけなのかは不明のままです。)

そして1990年、事件は起きます。

彼とユーロニモスは森の中の一軒家で共同生活をしていたのですが、ある日ユーロニモスが家に帰ると、デッドが自分の首と手首を切り裂き、頭をショットガンで吹き飛ばして自殺していました。

それを見たユーロニモスは、すぐにカメラを手にすると、デッドの遺体を写真に収めました。さらに信じられない事に、ユーロニモスは後に、メイヘムのアルバムのジャケットにその写真を無修正で使いました
(このアルバムは輸入盤のみ存在し、私は池袋のディスクユニオンで見かけた事があります。購入はしませんでした。また、内容が内容だけに、リンクは貼らないでおきます。)

また、ユーロニモス吹き飛んだデッドの頭蓋骨を集め、ネックレスに加工してインナーサークルのメンバーにプレゼントしていたそうです。(これについては複数の証言があり、信憑性は高いです。)

さらに、『デッドの脳をスープにして食べた』という噂もありますが、これは半分都市伝説のようなもので、確固たる証拠はありません。(というか、ユーロニモスの性格を考えればたぶんしてないです。)

このようなユーロニモスの猟奇的な行動は、当然と言うべきか周囲との関係に亀裂を生じさせていきます

 

さて。そんな中、インナーサークルにはもう一人、重要な人物がいます。

彼の名はカウント・グリシュナック(本名ヴァーグ・ヴァイカーネス)。
彼は“バーズム”というバンド(というか1人プロジェクト)活動と同時に、メイヘムの準メンバーのような人物でした。

ユーロニモスグリシュナックは、デッドが自殺する前年の1989年に出会っています。(ちなみに、デッドが自殺する際に使ったショットガンの弾丸は、グリシュナックがデッドに送ったものです。)

91年バーズムとしての活動を始めた彼は、92年にはメイヘムのアルバムにも参加しており、インナーサークルの中心的な人物でした。

その92年に、ノルウェー国内のキリスト教系の礼拝堂3棟が焼ける放火事件に他のインナーサークルメンバーと共に関与したとされ、逮捕・拘留されていますが、証拠不十分で不起訴になっています。この事件は、当時のノルウェー社会で大問題となり、警察の徹底的なマークにより、インナーサークルの始まりとなったユーロニモスのレコードショップは閉店する事になりました。

この事が直接関係している訳ではないようですが、その後、ユーロニモスとグリシュナックの関係は悪化していきます。(一説にはユーロニモスがバーズムの活動を良く思っていなかったとか、金銭問題があったとか言われています。)

そして1993年、事件は起きました。

ノルウェー・オスロにあったグリシュナックの自宅アパートにユーロニモスが訪ねた際に、グリシュナックはユーロニモスを刺殺しました。

動機はいろいろ言われていて、グリシュナック本人は「ユーロニモスが俺を監禁して拷問を加えながら殺す所をビデオで撮ろうとしていた事を聞いた」と言ってたりしますが、本当の所はわかりません

翌94年グリシュナックは逮捕され、懲役21年の判決を受けています。なお、彼は2003年に短時間の仮釈放中に逃走し、更に刑期が伸びています。また、服役中にややこしい政治思想を持ち、何冊も本を書いています

グリシュナックは2009年に15年の服役を経て仮釈放され、保護観察処分になっていますが、2013年には妻と共にテロ準備罪で逮捕(これは不起訴)され、2014年には人種差別扇動で有罪判決を受けています。

 

こうして、インナーサークルは内外に渡って、殺人・放火・爆弾テロなどの凶悪犯罪を行った結果、逮捕者が続出、組織は自然と解体に向かったのでした。

 

 

……インナーサークルの解説だけですごい長くなってしまったので、本題は[その3]へ書きます…(;´Д`)

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